「直撃LIVE グッディ!」(2020年4月9日)より小倉崇以先生(済生会宇都宮病院救命救急センター長・日本集中治療医学会ECMOnet所属)のインタビューを書き起こし要約しました。新型コロナに立ち向かう緊張感のある日本の医療現場の話です。
安藤さん(A):最前線の医療現場の様子は?
小倉先生(O):非常に苦しい戦いを強いられています。ECMOの患者さんがあふれ、県内では対応できず県外でECMO治療を受けるケースが出ています。
A: ECMOもそれをオペレーションするマンパワーも足りないということ?
O:その通りです。ECMOの増産は閣議決定されていずれ入ってくるでしょうが、それを正しく使う人間がどれだけいるか、我々も把握できておらず、そういう人を使い、さらに新たに教育し広げていかなければらならいのが現状です。
(中略)
A:現場では休むこともままならないそうですが、具体的な状況は?
O:月の時間外が130、150時間、それ以上働いている救急の先生がいらっしゃいます。これは特記すべきデータかもしれませんが、一般的にも現場の苦労は多大です。
A:ICUの看護師さんが新型コロナに感染した事例が出ており、オーバーワークではないかという指摘があります。いかがお考えですか?
O:おっしゃる通りで、感染対策にどれだけ気を遣ってもこれで本当に十分か分からないというストレスや、残念ながらコロナを見ているというだけで風評被害に遭う事例もあり、心的・肉体的の両ストレスが重なって、ICUの現場は本当に苦しいです。
A:医療従事者のストレス、精神状態はいかがですか?
O:いっぱいいっぱいです。目の前の患者さんを治療することも大事ですが、ECMO治療をできる人間を増やす教育も必要ですから寝る暇もなく、私自身2月3月の睡眠時間は一日3~4時間です。
A: ECMOを使えばほとんどの方が命を落とさずに済みますか?
O:それは不可能だと思います。我々のデータ(3/30集計)からしますと、40人のECMO治療の結果、19人が良くなり6人は死亡しています。残り15人はまだ治療中ですが、これはあくまでも医療が崩壊していない状態でのデータで、感染爆発が起こってイタリアのようになってしまえば、ECMO治療をやりきることは絶対にできない。なのでECMO治療をやりきるには、まずは感染爆発を起こさないことです。そして、通常のECMOの診療を我々ができる体制を維持していただきたい。
A:そのために必要なことは?
O:人が動けばコロナも動きます。それを国民ひとりひとりが正しく認識し、節度ある行動を取ることが大事です。
A:ECMO治療を経て、回復する・しないの明暗を分けるものは?
O:「うまいECMO管理」、つまり合併症を起こさないことです。新型コロナには特効薬がありません。特効薬がないということは耐えるしかないんです。ECMOは生命維持装置で、それを付けて2、3週間なんとか耐えるというのが今の治療です。その間に出血や感染症を起こすとか透析を防ぐとか、肺以外の臓器を守りながら耐えられるか否かが分かれ目です。
A:ECMOで補助しながら、患者自身が回復するのを待つと?
O:その面も多分にありますが、逆に言えば、もともと透析や肝硬変など肺以外の臓器にダメージがある状態でコロナにかかると、救命率が下がるのが現実です。
A:政府が非常事態宣言を出し、外出の自粛等が要請されています。これについて言いたいことは?
O:我々は目の前の患者を救うことに全力をあげています。ただ、これ以上患者が増えると、その現実と向き合って戦っていくには自信がない状況です。ぜひとも感染者を増やさない努力を続けていただき、我々に通常の医療を続けさせていただきたい。
A:現在の医療現場は逼迫している、崩壊一歩手前ということですか?
O:完全に一歩手前です。気を抜くと崩壊します。
国名
感染者数 死亡者 回復者数 (4月10日午前12時30分現在)
アメリカ
46万6,299人(最多) 1万6,686人 2万6,522人
スペイン
15万3,222人(2位) 1万5,447人 5万2,165人
イタリア
14万3,626人(3位) 1万8,279人 2万8,470人
フランス
11万8,785人(4位) 1万2,228人 2万3,441人
ドイツ
11万8,235人(5位) 2,607人 5万2,407人
日本
5,530人(29位) 99人 685人
Johns Hopkins University & Medicine, Coronavirus Resource Center
https://coronavirus.jhu.edu/