ガルセッティ・ロサンゼルス市長(写真左)は昨日の会見で、正式にロサンゼルス市民全員にマスク着用を奨励したことはすでにお知らせしました。本日(4/2)の会見には、ロサンゼルス郡保健局のディレクター、バーバラ・フェラー氏(写真中央)が同席し、さらに踏み込んで説明しています。
市長はマスクを以下の3つに分けています。
① 微粒子用の高性能マスク
② Surgical Mask
③ Face Covering
①は、「N95マスク」に代表されるタイプで、ウイルスを含んだ飛沫の侵入を防御できる高性能マスクです。市長はこれを医療の最前線で働く人向けの医療用マスクとし、一般人がこれを買い求めるのはやめるよう要請しています。
②は一般的な医療用マスクです。左右についたひもを耳にかけ、顔にフィットさせるためのひだが入ったフィルター部分で鼻と口を覆うものです。一般的に日本で普及している形に似ていますが、日本のものがサージカルかどうかはわかりません。このマスクは、①までの性能を必要としない医療従事者や、一般のセントラルビジネス(スーパーやドラッグストア、ナーシングホームやシェルターなど)の従事者に使ってほしいとし、これも一般人の購入はやめるよう要請しています。
③は一般人向けのマスクです。マスクと訳していいのかどうかわかりませんが、要は“鼻と口を覆うもの”という意味です。バンダナやハンカチなどの布を利用した手製のものでいいとしています。このタイプ(Face Covering)は、自分の飛沫を自分に向けることを目的としています。つまり、自分への感染防止ではなく、他人への拡散防止が目的です(←ここ重要)。
フェラー氏は、「数週間前はロサンゼルス郡保健局も公式にFace Coveringを奨励していなかったが、それは無症状感染者による拡散の事実が明確でなかったため」とし、現時点ではFace Coveringは有効と話しています。また、自分への感染防止のみならず、他人への拡散防止にも責任を持ってほしいと語っています(←ここも重要)。
またガルセッティ市長は、「無症状感染者が無自覚でウイルスを広げていることは様々なデータからわかっており、これを抑えるにはSocial Distancing(社会的距離の確保)や自宅待機が有効であるが、Face Coveringを加えることでより効果的となる」と、この発表の理由を話しています。ただし、Face Coveringをしたからといって外出していいのではなく、引き続き自宅待機命令に従うよう指示しています。
さて、今日の注目点は、ロサンゼルス郡と市が統一メッセージとして布製マスク(Face Covering)の着用を奨励したことだと思います。布製マスクについては、WHOはいかなる状況でも勧めないと発表しています。また報道によると、CDCはこれまでの方針を一転しマスク着用の勧告を検討してはいるようですが、まだこれについての言及はありません。そんな中、ロサンゼルス郡と市が先行した形です。
両氏とも力説しているのは、ウイルスの感染防止ではなく拡散防止です。つまり、自分ではなく他人に重点を置いた政策というわけです。布マスクは、感染防止としては意味がないことは私のような素人でも容易に想像できます。しかし、「自分の飛沫は自分に向ける」というウイルス不拡散の基本姿勢を考えれば、布製マスクは大いに有効である気がします。実際、日本でも「人にうつさない」という意味では効果的とする専門家は多いようです。
日本では今、安倍首相による「布製マスク2枚配布」政策への異論や失笑が巻き起こっているようですが、それは感染防止の観点からしか考えていないためかもしれません。布製マスクには感染拡大の防止効果はあるようですから、感染爆発や医療崩壊の回避を視野に入れた政策なのであれば、そこをきちんと話せばいいと思います。
念のため、首相官邸ホームページ「新型コロナウイルス感染症対策本部(第25回)」を確認したところ、配布理由について「布マスクは使い捨てではなく、洗剤を使って洗うことで再利用可能であることから、急激に拡大しているマスク需要に対応する上で極めて有効であると考えております。(中略)店頭でのマスク品薄が続く現状を踏まえ、国民の皆様の不安解消に少しでも資するよう、速やかに取り組んでまいりたいと考えております」と書いてあります。
これだと、感染防止の観点で考える人が多数を占める日本では説得力がないと思います。まずはウイルス拡散防止への意識改革だと思うのですが、だからこそ布マスク配布に大金を投入しなくても、ガルセッティ市長やフェラー氏のように「みなさん、自分で布製マスク作ってください。でもそれはあなたの感染防止ではなくて、他人への拡散防止です。意識を変えましょう」ってお願いしたらいいと思うのですが、どうでしょう?
今日(4/2)の市長の会見は下のリンクにあります。ご覧になって正しく内容を理解してください。
https://corona-virus.la/