以前の投稿と重なるところもありますが、新しい情報も入れつつ、現時点までのロサンゼルスの状況をまとめてみました。
【Stay at Home Order(自宅待機命令)について】
米国西海岸時間3月19日、カリフォルニア州全土に「Stay at Home Order」(自宅待機命令)が出されました。同日にロサンゼルス市でも同様の法令が施行されましたが、こちらは「Safer at Home Order」という名前で出されています。名称は異なりますがどちらも同じ内容で、違反者には罰金ないし禁固刑が科されます。基本的な内容は以下の通りです。
●自宅で待機する(外に出ず、他人との接触をやめる)
●外出は、生活(あるいは命)の維持に必要不可欠なサービスを受ける時のみに限定する
●他人との距離は 6 フィート(約 1.8 メートル)以上確保する
●集団にならない
同法発令後もアメリカの感染者と死亡者の数は急増しています。それに伴い、いろいろな規則が追加施行されています。その代表例が以下のものです。
●ロサンゼルス市内の政府が指定したCentral Business(スーパーや病院、公共交通機関など生活に不可欠なビジネス)以外のすべての商業サービスの停止(レストランは店内飲食は禁止で、持ち帰りおよび配達はOK)
●ロサンゼルス郡管理の公園やトレイル、バスケットボール場や球場、サッカースタジアムなどのスポーツ施設、その他すべての公共施設の閉鎖
●公共の娯楽施設、アミューズメント施設、商業モールの閉鎖
●ビーチやビーチに続くトレイル、ビーチ併設の公共駐車場の閉鎖
これ以外にもいろいろあります。「Stay at Home Order/Safer at Home Order」を日本で「外出禁止令」と訳しているメディアが散見されますが、これは違います。禁止されているのは、日本でもキーワードになっている「不要不急」の外出。自分あるいは家族や知人の命を維持(確保)するために必要な外出であれば許可されています。以下がその例です。
●食料品店、コンビニ、日用雑貨店に生活必需品を買いに行くこと
●必要な薬や医療品の入手・受け取りのために薬局に行くこと
●予約している診察を受けに病院に行くこと
●テイクアウトやデリバリー、ドライブスルーサービスを提供するレストランに行くこと
●家族や友人のケアおよびサポートをしに行くこと
●散歩や自転車、ハイキング、ジョギングなど、エクササイズのために自然に出ること(ただし他人との間隔は6フィート以上空けること)
●ペットを散歩に連れていったり、ペットを獣医に連れていったりすること
●必要物資の入手が必要な人を手伝うこと
それに対してやってはいけないことは以下の通りです。
●同法令により活動が許されていない業種(会社)で働くこと
●緊急を要しないにもかかわらず、家族や知人宅に訪問すること
●他人との間隔が6フィート以上確保できない場所に出る(行く)こと
●必要不可欠な目的以外でロサンゼルス市外での仕事や旅に行くこと、またはそこから市内に戻ってくること
●ロサンゼルス市外への別荘に行くこと、またはそこから市内へ戻ってくること
●病院やナーシングホーム、看護施設などに入院(入所)している人に面会すること
●複数人(あるいはグループ)でビーチに行ったり、団体競技(スポーツ)を行ったりすること
●人数に関係なく、何かしらの屋外活動に従事すること
【全米で2億人以上が自宅待機している現状】
現在は、27州で自宅待機命令が出されており、実にアメリカ国民の約2/3の2億2500万人が自宅待機を余儀なくされています。ロサンゼルスで同法令が施行されてそろそろ2週間経ちますが、その間私は食料品購入のために3日しか家を出ていません。日本の自粛とは異なりこちらは法令ですので、徹底して外出が制限されています。しかし、市民は驚くほど従順に規則に従っています。また、ほとんどの一般の企業が自宅勤務に切り替えていますので、町には人はいません。普段渋滞がひどいロサンゼルスのフリーウェイも、別世界のように空いています。私は平常時であればほぼ毎日外出し、スタバのコーヒーひとつにしても何かしらの購買活動をしていました。また、フリーランスの写真家として仕事をする私は自由にビジネス活動を行い、生活のための収入を得ていました。しかし今やそれが全くできません。各々環境は違えど、今のアメリカでは2億人以上の人の動きが止まっているわけですから、よく「経済に与える影響は甚大」とさらっと耳にするこの言葉の意味が実感としてよくわかります。
【ロサンゼルスの準備態勢】
ニューヨークは患者数が極端に多く、医療崩壊の回避が急務とされています。重篤患者に必要な人工呼吸器の不足が始まっており、医療スタッフも患者の急増で人材不足になっているようです。ロサンゼルスはまだそこまでひどくはありませんが、だからこそ先手先手で準備を始めています。
その一つが、3月28日にロサンゼルス港に到着した巨大船マーシー号(U.S Naval Hospital Ship MERCY)です。日本でも報道されていましたが、これは約800人の医療関係者と12の手術室(完全装備)や1000の病床、放射線科施設、医学研究所、酸素生産工場などを擁する海軍所有の巨大な病院船です。マーシー号の目的は新型コロナウイルス感染者を受け入れることではなく、それ以外の患者を受け入れることでロサンゼルスの医療機関の負担や不足、運営麻痺など、医療崩壊を回避することです。マーシー号はロサンゼルスで最大規模の病院で、すでに3月30日から稼働しています。ニューヨークにも同様の病院船「コンフォート」が派遣されています。また、ニューヨークでは病床が足りなくなることを考えて、セントラルパークにテントで作った「野営病院」の建設が始まっています。
その他、市内のホテルやモーテルに部屋(ベッド)の提供を求めているほか、ダウンタウンにある巨大なコンベンションセンターにベッドや医療機器を入れ込んで病院として利用する計画も進められています。さらに、ロサンゼルスに限ったことではありませんが、この先の人工呼吸器不足の可能性を受け、大手自動車メーカーのフォードが3月30日、今後100日以内に人工呼吸器を最大5万台生産すると明らかにしています(その後は毎月3万台の生産予定)。
【現状のまとめ】
現在、ロサンゼルスは完全に止まっています。どこも行くところはありませんし、人の動きもありません。経済活動も滞っています。いつまで続くか分かりませんが、今も感染者や死亡者が増加し続けていることや自宅待機命令が4月30日まで延長されたことなどを考えると、少なくとも最低1カ月はまだこの状態が続くものと思われます。
アメリカは個人主義の国で、日本人に比べると好き好きに行動しているイメージがあると思いますが、一連の新型コロナ対策に対しては驚くほど従順に法令や規制に従っています。学校閉鎖にしても一気に、しかも突然始まりました。日本では「保護者の負担が増える」「全国一斉にする必要はない」などたくさんの異論・反論が出たようですが、アメリカでは誰もそんなことは言わず、強制的に休校が始まりました。アメリカが最も優先して考えることは「救命」(Save lives)です。今の生活が不便になることは当たり前で、その不便を我慢しないと命が奪われてしまうという考え方です。
つい最近まで、日本の方が新型コロナに対しての対策や国民の心構えはアメリカに先行していました。しかしここ数週間で、アメリカは一気に戦闘モードに突入。被害状況も日本より明らかに悪化し、今となっては逆にアメリカの方が先行して矢継ぎ早にいろいろな対策を講じています。アメリカはこういう時本当に早いです。法令ひとつとっても急に発表され、その夜から施行というように目まぐるしく動いています。
日本もまだまだ油断できないと思いますので、皆さまにおかれましてもくれぐれも気をつけてお過ごしください。
アメリカにおける
感染者数:18万9,633人
死亡者数:4,081人
快復者数:7,136人
※4月1日午前12時55分現在(ロサンゼルス時間)
Johns Hopkins University & Medicine
ロサンゼルス郡における
感染者数:3,011人
死亡者数:54人
※3月31日正午現在(ロサンゼルス時間)
County of Los Angeles Public Health