北朝鮮に拉致され、今なお北朝鮮におられるであろう横田めぐみさんのお父様で、拉致被害者家族会前代表の横田滋(しげる)さんがお亡くなりになりました。
私は毎晩寝る前にニュースをチェックするのですが、その時に滋さんの逝去を知りました。結局めぐみさんに会うことができずお亡くなりになるなんて、あまりにもお気の毒で、私はしばらく眠ることができませんでした。
この世にこれほどひどい人権侵害があるものか。北を許すことはできません。
安倍政権は、拉致問題を最優先課題と位置づけてきました。首相は小泉政権の時からこの問題に関わっていただけに、その意思は確かだったと思います。
しかし、この最悪な結末(拉致問題はまだ終わっていませんが、滋さんがめぐみさんに会えなかったという意味では最悪の結末)を目の当たりにすると、安倍首相の姿勢が何とも虚しく表向きなポーズにしか思えなくなります。残されたご家族の高齢化により時間がなくなっていくことは最初から明らかでした。にもかかわらず、前進することなく時間だけが過ぎていきました。
他国に誘拐された自国民を助けることに、何の障害や躊躇があるのでしょうか?
滋さんの逝去に対し、安倍首相や菅官房長官は「申し訳ない」と口をそろえ、野党は「どれほどの無念だったか」「お悔やみ申し上げます」とのコメントを出しています。
遅いんです。なぜもっと本腰を入れて与野党で協同しなかったのか。森かけ問題や桜を見る会問題など、もちろん重要ではあるけれど、政権を取る気がないのにいつまでも政権批判ばかりを繰り返す野党にも大いに責任はあります。言い方は悪いですが、拉致問題と比べたらそんな話はどうでもいいこと。滋さんが無念の死を遂げてしまったのは政治家の責任です。ご本人たちには何の責任もありませんし、どうしようもありません。国民の力ではどうしようもないことをどうにかするのが政治家の仕事です。
NST新潟総合テレビ(6/5)のインタビューで、2002年に北朝鮮から帰国した拉致被害者の蓮池薫さんがこうおっしゃっていました。
「悲しいのと悔しいのと、あまりにも当然の親子の再会を最後まで阻んだ北朝鮮への憤りは抑えられない。政府には『拉致被害者家族が亡くなった』というありきたりの言葉で済まさず、強い覚悟と行動力で応えてほしい」。
本当にその通りです。日本政府に必要なのは「強い覚悟と行動力」です。与党も野党も関係ありません。もう時間はありません。
今の状態で北は話し合いに応じるわけがありません。日本の主張を聞いて同じテーブルに着くわけもありません。北がアメリカを相手にするのは軍事力があるからで、日本のように軍事力の行使を放棄している国を相手にするわけはありません。もちろん日本は憲法の問題で軍事力を行使できないことは分かっています。しかし拉致されて40年以上です。憲法改正もふくめ時間は十分あった気がします。それが難しくても、経済力=金に物を言わせて断固たる外交姿勢を突き付ければよかった。
自国民を自力で取り戻せない日本を主権国家とは呼べません。
アメリカが日本の立場だったらどうでしょう。おそらくもっと早くに解決していると思います。軍隊でも特殊部隊でも送り込んで救出していたと思います。それに比べて日本はあまりにも悲しい。とにかく時間がかかりすぎています。
日本テレビ6/6の「日テレNEWS24」で、拉致被害者の増元るみ子さんの弟、照明さんがこう答えています。
「この頃本当に思うんですけど、この世では会えないのかなと。私の世代でもこの世で会えないのかなと思いを抱かせるような世の中の流れです。本当に残念ですけど」。
動画ではこの部分しかありませんでしたので照明さんの意図を汲むしかないのですが、横田滋さんとめぐみさんのような(年齢差がある)親子関係ではなく、(自分たちのような年齢差がない)兄弟姉妹であっても、もうこの世で(生きて)会うことはできないのかもしれない、という絶望感をおっしゃっているのだと思います。そして、今その流れを感じると。
拉致された方を待つ親はもう二人しかいないそうです。拉致被害者およびそのご家族は、拉致問題が一向に前進しないことに怒りと不安、照明さんのような絶望感を抱いておられます。同じ国民として身につまされる思いです。
JIJI.COM(時事通信・6/6配信)の情報によると、滋さんの奥様(めぐみさんのお母様)の早紀江さんは毎日のように滋さんのお見舞いに行っていたそうですが、2月頃からコロナ対策で面会できず、手紙や電話でのみのやり取りだったそうです。最近になってようやくテレビ電話で話せるようになり、「やっと顔が見られた」と喜んでおられたそう。この記事を読む限り、奥様やご家族は滋さんの最期に立ち会えていないのかもしれません。本当にお気の毒です。
心からご冥福をお祈り申し上げます。